Official Staff
フィギュアの原型が圧倒的な存在感を放つ。《中村政人 個展「明るい絶望」》アーツ千代田3331
アーツ千代田3331を率いる中村政人の実に10年ぶりの個展「明るい絶望」がアーツ千代田3331においてはじまった。作品のメインは約40,000枚にもなる膨大な数の写真の中から、1989〜94年のソウル〜東京に絞って厳選した約700点のフィルムで撮影した写真群。自動車の車体を製造する技術を用いた絵画的作品もユニークだが、なんといっても、民芸品などを忠実に巨大化させたインスタレーションが白眉だ。
これは中村の秋田県大館の実家の飾り棚に置かれていた民芸品の人形を、同じ製造技術を使って等身大に立体化した作品だ。中村といえば、ファストフード店やコンビニエンスストアのサインから色や形だけを抽出したイ...
Official Staff
身につけるアート。コンテンポラリー・ジュエリーの世界《オットー・クンリツ展》東京都庭園美術館
アートとしてのジュエリーを創造するコンテンポラリー・ジュエリー。この分野を代表する、スイスのジュエリー・アーティスト、オットー・クンツリの作品を展観する『オットー・クンリツ展』が東京都庭園美術館ではじまった。
ジュエリーが持つ身体との関係性、さらに他者や社会と結びつけるコミュニケーションの触媒としての性格を巧みに利用して、ジュエリーを普遍的な人間存在や社会のメタファーへと変換させてきたクンリツ。コンセプチュアルなアプローチの作品ばかりではなく、時折、見せるユーモア溢れる表現はこの人の表現の幅、多様性を感じさせ、そこが魅力となっている。
作品の多くはコンセプチャルなもので、男女をつないでし...
Official Staff
雨の空間の中、水面にたたずむ:奈良美智《Shallow Puddles》BLUM & POE 東京
10月2日から奈良美智さんの個展『Shallow Puddles』が原宿のBLUM & POE 東京ではじまった。
Shallow Puddlesは2004年と2006年に制作されたペインティング作品で、巨大な皿にパッチワークのようにキャンバス生地を貼り付け、おなじみの奈良さんのキャラクターを描いた12点の作品。実はこれらの作品は、2004年に制作された大阪のgraf media gmで6点が展示され、2006年に制作された6点が青森県立美術館の八角堂に展示されていたもので、シリーズ12点が一堂に展示されるのは今回が初となる。
奈良美智さんの作品は実にさまざまなところで目にすることができ...
Official Staff
極小化されたゆうえんちの記憶《岩崎貴宏展 埃(10-10)と刹那(10-18)》小山市立車屋美術館
鉄塔のような巨大構造物を髪の毛などを使って極小サイズで再現する《アウト・オブ・ディスオーダー》、歴史的な建築を実像と水面に映る虚像を融合させた《リフレクション・モデル》などで国内外から評価が高いアーティスト岩崎貴宏。岩崎の国内初となる個展「山も積もればチリとなる」が3月に黒部市美術館で開催され、7月からは『埃(10-10)と刹那(10-18)』とタイトルを改め、小山市立車屋美術館で開催中だ。
栃木県小山市で開催するにあたり、新たに小山という地に寄り添った内容へと改変されている。その象徴的な存在が《アウト・オブ・ディスオーダー》の中で再現された観覧車だ。小山市は過去、小山ゆうえんちという関...
Official Staff
カラフルなボタンが踊る《映像表現の現在―宮津大輔コレクションより》上野の森美術館ギャラリー
上野の森美術館ギャラリーにおいて『映像表現の現在―宮津大輔コレクションより』が現在開催中だ。現代美術コレクターである宮津大輔さんのコレクションよりセレクトされた映像作品で、志賀理江子「カナリア」、志村信裕「jewel」、高木正勝「Tidal」、森山大道「25時 shinjuku, 1973」の4作品が紹介されている。
志村信裕さんの「jewel」は、床面に投影された映像の中を、カラフルなボタンがはじけ続けているもので、実際に本物のボタンを何度も落とす映像を収録して、これを組み合わせたものだ。ちょっと見にはインタラクションのあるものに見えるが実際にはそうではない。にも関わらず、子どもたちが...
Official Staff
燃やして描く。人が生命を燃やす瞬間《蔡國強展:帰去来》横浜美術館
世界的な現代美術家である蔡國強の個展『蔡國強展:帰去来』が7月11日(土)より横浜美術館において開催される。蔡は火薬を燃やすことでカンバスに絵を定着させる“火薬ドローイング”と呼ばれる手法で作品を制作することで知られる。
本展のために蔡は6月より横浜に滞在、6月20日には火薬ドローイングによる限定的な公開制作を同館のグランドギャラリーで行った。そのときの模様が本サイトのトップページにある作品の前に立つ蔡の姿であり、本展の目玉とも言える、グランドギャラリーの壁面いっぱいに展示された新作『夜桜』だ。
蔡は公開制作後も本展のために新作『人生四季 春、夏、秋、冬』の4作品をグランドギャラリーで制...
Official Staff
美しさの中に描かれた文明化の闇。《ヤン・ファーブル:TRIBUTE TO HIERONYMUS BOSCH IN CONGO》エスパス ルイ・ヴィトン東京
エスパス ルイ・ヴィトン東京において7月9日からベルギーの現代美術家、ヤン・ファーブルの個展『TRIBUTE TO HIERONYMUS BOSCH IN CONGO(2011-2013)展』が開催されている。ファーブルといえば、スカラベの鞘翅を使った目も眩むような美しいモザイク作品がよく知られているが、意外や日本では初めての公開となるという。
同展では植民地政策という文明化の「闇」に光をあてたものとなっており、とりわけファーブルの故国であるベルギーが19世紀から20世紀の間にコンゴに対して行った奴隷制、搾取や略奪といった行為を、初期フランドル派の画家ヒエロニムス・ボスの「快楽の園」にな...
Official Staff
蔡國強の夏! 横浜、越後妻有、東京へ。まずは横浜美術館『蔡國強展:帰去来』
今年行われる中でもっとも期待されている展覧会のひとつ、中国人アーティストのスーパースター、蔡國強(さいこっきょう/ツァイ・グオチャン)の展覧会『蔡國強展:帰去来』が7月11日(土)より横浜美術館で開催される。
蔡國強は、火薬の爆発によって描く絵画や、スケールの大きなインスタレーション、中国の文化・歴史・思想から着想を得た作品など、ダイナミックな表現力と理解しやすいコミュニケーション力を持った手法で、アートファンのみならず幅広い人々を魅了しているアーティストだ。横浜美術館のグランドギャラリーなど、余裕のある空間を活用したスケールの大きな作品を期待したい。
7月26日(日)からは今夏、開催さ...
Official Staff
夏至の前日、日の出とともに。オノ・ヨーコ《モーニング・ピース2015》が全世界で開催:東京都現代美術館
オノ・ヨーコの作品「モーニング・ピース」がはじめて行われたのは1964年5月24日、新橋の画廊だった。翌年9月にはニューヨークの彼女の自宅屋上でも実施された。その50周年を記念して、ニューヨーク近代美術館(MoMA)において開催中の「Yoko Ono: One Woman Show, 1960-1971」展の関連企画として、「モーニング・ピース2015」がMoMAのグローバル・パートナー8館※で全世界で同時開催される。
日本での開催となる東京都現代美術館では、6月21日(日)の日の出から門を開け、美術館正面入口の外、西側にあるテントでイベントが実施される。本イベントでは、参加者は任意の未...
Official Staff
本の上の彫刻:スー・ブラックウェル《Dwelling -すみか-》
電子書籍では成立し得ないアート、それがスー・ブラックウェルが手がける、本を素材とした彫刻=ブック・スカルプチャーだ。ブラックウェルは文学作品をインスピレーションに作品づくりを行う。本を選び、読み終えると、物語のイメージをもとに、読んだ本のページをカットし、本の上に彼女の空想風景を構築していく。本の上という限られた小さな空間に、繊細で儚げな世界が生み出される。彼女の新作となる、ガストン・バシュラールの「空間の詩学」を素材とした「Dwelling すみか」をはじめ、ブック・スカルプチャー11点を紹介する『スー・ブラックウェル「Dwelling -すみか-」』が銀座のポーラミュージアムアネック...
Official Staff
台湾式、ちょっとエロくてポップなマンガチック・ワールド:王建揚《宅-HOUSE》
ポップで、ちょっとエロくて、アニメやマンガのような超現実の世界。台湾のアーティスト、王建揚が描く世界はテーマや手法はありそうなものであるはずなのに、中華風味の独特なテイストが漂う。すべてが現実の中のセットで作り上げられているにも関わらず、モデルだけが現実であるかのように浮き出て見えるのもユニーク。モノクロでマンガのコマに描きこまれた世界に、現実のモデルが溶け込んだ作品も必見。「GEISAI TAIWAN #1」で《宅》シリーズで審査員個人賞を獲得した王は、アジアを中心にワールドワイドで積極的に活動を展開している。ウェブを駆使し、絵画やマンガ、ネット上のイメージを引用し再構築するという、ま...