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「英国の夢」ってどんな夢?19世紀イギリスの画家たちが見た理想〜『リバプール国立美術館所蔵 英国の夢 ラファエル前派展』
正直に言えば、『ラファエル前派』というグループの存在は、その中にジョン・エヴァレット・ミレイの名前を見つけなければ、まったく知らないままだったと思う。まして、ミレイの描いた「オフィーリア」が好きでなければ、興味も持たなかったかもしれない。
ミレイのオフィーリアもそうだが、ラファエル前派を成した、ロセッティやウォーターハウスの作品を見ていると、これは一体、いつの時代の作品なのかさっぱり検討がつかなくなる。いや、もちろん、美術史を勉強したり、研究している人にはごく常識なのかもしれないが。
まして、ラファエル前派が発生した場所が19世紀「産業革命」のリヴァプールだなんて聞けばますますこんがらが...
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東山ブルーが美しい、佐藤卓によるシンボルマーク誕生《山種美術館》
2015年10月13日に行われた『都内5美術館 2016年開催企画展 合同記者発表会』において、山種美術館が50周年記念シンボルマークを発表した。山種美術館と言えば、何と言っても日本画家・安田靫彦(1884〜1978)による「書・山種美術館」を使ったロゴが印象深いが、ここにグラフィックデザイナー・佐藤卓さんがデザインしたシンボルマークが加わった。
この格子の丸窓を思い起こさせる日本的なデザインのシンボルマークは、横組みのアルファベット「YAMATANE」の文字を縦長にして円状に収めたものと、縦組みの漢字「日本画」の文字を横長にして円状に収めたものを重ね合わせている。さらにシンボルマークの...
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Google Art Projectに伊藤若冲『樹花鳥獣図屏風』がお目見え
Googleカルチュラルインスティチュートに、新たに日本の美術館7館が加わり、世界中の美術館が所蔵する美術作品をオンラインで鑑賞できるアーカイブサイト「Google Art Project(グーグルアートプロジェクト)」で、静岡県立美術館が所蔵する伊藤若冲の『樹花鳥獣図屏風』をはじめ486点が閲覧できるようになった。
同プロジェクトへの日本の美術館の協力は2012年の東京国立博物館などの参加からはじまっており、順調に協力館を増やし、日本美術の紹介にひと役買っていると言える。今回公開された作品中、目玉と言える「樹花鳥獣図屏風」は70億画素のギガピクセルで撮影されたもので、肉眼はもちろん単眼...
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フィギュアの原型が圧倒的な存在感を放つ。《中村政人 個展「明るい絶望」》アーツ千代田3331
アーツ千代田3331を率いる中村政人の実に10年ぶりの個展「明るい絶望」がアーツ千代田3331においてはじまった。作品のメインは約40,000枚にもなる膨大な数の写真の中から、1989〜94年のソウル〜東京に絞って厳選した約700点のフィルムで撮影した写真群。自動車の車体を製造する技術を用いた絵画的作品もユニークだが、なんといっても、民芸品などを忠実に巨大化させたインスタレーションが白眉だ。
これは中村の秋田県大館の実家の飾り棚に置かれていた民芸品の人形を、同じ製造技術を使って等身大に立体化した作品だ。中村といえば、ファストフード店やコンビニエンスストアのサインから色や形だけを抽出したイ...
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兎も蛙も人も、イキイキ。これこそニッポンの表現力の原点。東京国立博物館:《鳥獣戯画 ─京都 高山寺の至宝─》
修復後、京都で初公開され20万人を動員した「鳥獣戯画」が東京で公開される「特別展『鳥獣戯画─京都 高山寺の至宝─』」(〜6月7日)が東京国立博物館で開幕した。四年の歳月をかけて修復した甲乙丙丁の四巻からなる「鳥獣戯画」に加え、断簡4作もあわせて公開される大変貴重な機会となる。また、所蔵する京都・高山寺の中興の僧・明恵(1173~1232)に関わる資料や、国宝「華厳宗祖師絵伝(華厳縁起)」なども展示されている。展示の4分の3は高山寺関連で鳥獣戯画は4分の1、甲乙丙丁が最も人気のある甲巻が最後という並び方。各巻とも前期展示と後期展示で展示される部分が異なり、会期中二回足を運ばないとすべてを見...
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蔡國強の夏! 横浜、越後妻有、東京へ。まずは横浜美術館『蔡國強展:帰去来』
今年行われる中でもっとも期待されている展覧会のひとつ、中国人アーティストのスーパースター、蔡國強(さいこっきょう/ツァイ・グオチャン)の展覧会『蔡國強展:帰去来』が7月11日(土)より横浜美術館で開催される。
蔡國強は、火薬の爆発によって描く絵画や、スケールの大きなインスタレーション、中国の文化・歴史・思想から着想を得た作品など、ダイナミックな表現力と理解しやすいコミュニケーション力を持った手法で、アートファンのみならず幅広い人々を魅了しているアーティストだ。横浜美術館のグランドギャラリーなど、余裕のある空間を活用したスケールの大きな作品を期待したい。
7月26日(日)からは今夏、開催さ...
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身につけるアート。コンテンポラリー・ジュエリーの世界《オットー・クンリツ展》東京都庭園美術館
アートとしてのジュエリーを創造するコンテンポラリー・ジュエリー。この分野を代表する、スイスのジュエリー・アーティスト、オットー・クンツリの作品を展観する『オットー・クンリツ展』が東京都庭園美術館ではじまった。
ジュエリーが持つ身体との関係性、さらに他者や社会と結びつけるコミュニケーションの触媒としての性格を巧みに利用して、ジュエリーを普遍的な人間存在や社会のメタファーへと変換させてきたクンリツ。コンセプチュアルなアプローチの作品ばかりではなく、時折、見せるユーモア溢れる表現はこの人の表現の幅、多様性を感じさせ、そこが魅力となっている。
作品の多くはコンセプチャルなもので、男女をつないでし...
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楽しみは展覧会だけじゃない。『鳥獣戯画 ─京都 高山寺の至宝─』展、充実のグッズに注目
上野の東京国立博物館で開催中の『鳥獣戯画 ─京都 高山寺の至宝─』展ですが、大変充実した展覧会だが、ぜひチェックしていただきたいのが数々のグッズ。公式図録(2,700円)やクリアファイル(600円)や鳥獣戯画のトランプ(写真)、定番の「おたべ」(540円)なんかは序の口。とにかく兎や蛙がかわいい、という方には、兎や蛙が描かれたiPhoneケース(2,500円)やクッション(3,000円)、兎と蛙の口からメッセージの吹き出しがある型抜きポストイット(550円)、絵巻の動物たちが描かれたマスキングテープ(700円)がオススメ。変わったところだと、線をなぞって名場面が写せる写経絵(600円)も...
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これが日本の次世代によるアニメ。スタジオコロリド最新作『台風のノルダ』公開
いまもっとも注目しているアニメーションスタジオ、スタジオコロリドの最新作『台風のノルダ』が6月5日公開される。
前作「陽なたのアオシグレ」から2年ぶりの本作は離島の中学校に通う好きな野球をやめてしまった東とその親友・西条が、文化祭前日に現れた赤い目をした不思議な少女ノルダと出会う。その時、観測史上最大級の台風が学校を襲うとして……、というストーリー。台風をテーマに据えた作品はさまざまあるが学校を舞台したものと言えば、思春期の子どもたちを鮮烈に描いた相米慎二監督の「台風クラブ」を思い起こす。
若い才能が集まるスタジオコロリドだが、本作では監督をスタジオジブリ出身で「借りぐらしのアリエッティ...
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燃やして描く。人が生命を燃やす瞬間《蔡國強展:帰去来》横浜美術館
世界的な現代美術家である蔡國強の個展『蔡國強展:帰去来』が7月11日(土)より横浜美術館において開催される。蔡は火薬を燃やすことでカンバスに絵を定着させる“火薬ドローイング”と呼ばれる手法で作品を制作することで知られる。
本展のために蔡は6月より横浜に滞在、6月20日には火薬ドローイングによる限定的な公開制作を同館のグランドギャラリーで行った。そのときの模様が本サイトのトップページにある作品の前に立つ蔡の姿であり、本展の目玉とも言える、グランドギャラリーの壁面いっぱいに展示された新作『夜桜』だ。
蔡は公開制作後も本展のために新作『人生四季 春、夏、秋、冬』の4作品をグランドギャラリーで制...
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極小化されたゆうえんちの記憶《岩崎貴宏展 埃(10-10)と刹那(10-18)》小山市立車屋美術館
鉄塔のような巨大構造物を髪の毛などを使って極小サイズで再現する《アウト・オブ・ディスオーダー》、歴史的な建築を実像と水面に映る虚像を融合させた《リフレクション・モデル》などで国内外から評価が高いアーティスト岩崎貴宏。岩崎の国内初となる個展「山も積もればチリとなる」が3月に黒部市美術館で開催され、7月からは『埃(10-10)と刹那(10-18)』とタイトルを改め、小山市立車屋美術館で開催中だ。
栃木県小山市で開催するにあたり、新たに小山という地に寄り添った内容へと改変されている。その象徴的な存在が《アウト・オブ・ディスオーダー》の中で再現された観覧車だ。小山市は過去、小山ゆうえんちという関...