上野の森美術館ギャラリーにおいて『映像表現の現在―宮津大輔コレクションより』が現在開催中だ。現代美術コレクターである宮津大輔さんのコレクションよりセレクトされた映像作品で、志賀理江子「カナリア」、志村信裕「jewel」、高木正勝「Tidal」、森山大道「25時 shinjuku, 1973」の4作品が紹介されている。
志村信裕さんの「jewel」は、床面に投影された映像の中を、カラフルなボタンがはじけ続けているもので、実際に本物のボタンを何度も落とす映像を収録して、これを組み合わせたものだ。ちょっと見にはインタラクションのあるものに見えるが実際にはそうではない。にも関わらず、子どもたちが落ちるボタンを追いかけ回すそうだ。
高木正勝さんの「Tidal」は絵具のようなタッチで風の中を舞うように描かれた少女の顔と髪が不連続的に映しだされる幻想的な映像だ。映像とともに印象的な音楽が耳から離れなくなる。志賀理江子さんの「カナリア」は第33回木村伊兵衛賞を受賞した写真集「CANARY」のために撮影した写真をシャッタースピードの速さに合わせてつなげ、映像インスタレーションとしたもの。刺激的なショットが挟まれているがシャッタースピードの速さか瞬時に消えてしまう。
森山大道さんの「25時 shinjuku, 1973」は1973年当時、新宿区の依頼により制作されたプロモーションフィルムだが、依頼意図にそぐわないものだったため、30年以上公開されずにいたもの。まさに「アレ・ブレ・ボケ」が映像でも表現されている。
小規模な展示ではあるが、美術館内のギャラリーで見応えのある作品をサクッと楽しめるこうした展示はぜひ他の美術館でもやっていただきたい。
【開催概要】
会期:2015年7月18日(土)〜7月28日(火)会期中無休
会場:上野の森美術館ギャラリー(上野の森美術館内)